自筆証書遺言と公正証書遺言、どちらを選ぶべきか|費用・手間・安全性を福山市の行政書士が比較解説

福山市で遺言書作成を検討している方の中には、「自筆証書遺言と公正証書遺言、どちらを選べばいいのだろう」と迷われる方も少なくありません。

遺言書には大きく分けて2種類あります。自分で手書きして作る「自筆証書遺言」と、公証人と一緒に作る「公正証書遺言」です。どちらが正しいということはなく、ご自身の状況によって向き・不向きがあります。

この記事では、費用・手間・安全性の3点から両者を比較し、どちらを選ぶべきかの判断基準をお伝えします。


遺言書の種類:まず全体像を整理する

遺言書には法律上、①自筆証書遺言、②公正証書遺言、③秘密証書遺言の3種類があります(民法第967条)。このうち③の秘密証書遺言は実務上ほぼ使われないため、本記事では①と②に絞って解説します。

どちらも法的に有効な遺言書であることは変わりません。違いは「誰が・どこで・どのように作るか」と「作った後の安全性・利便性」にあります。


自筆証書遺言とは?メリット・デメリットと注意点

基本的な要件(民法第968条)

自筆証書遺言が有効になるには、以下の要件をすべて満たす必要があります。原則として、遺言本文は遺言者本人が自筆(手書き)で作成する必要があります(財産目録は除く。後述)。また、作成日付を正確に記載すること(「吉日」など特定できない日付は無効です)、遺言者の氏名を自書すること、そして押印することが求められます。

2019年(平成31年)1月の民法改正により、財産目録部分についてはパソコン作成や通帳コピーの添付も認められるようになりました(民法第968条第2項)。ただし、財産目録の各ページに署名・押印が必要です。また、訂正・加除変更の方式も法律で厳格に定められており、方式を誤ると訂正自体が無効になります(同条第3項)。

「令和7年7月吉日」という日付の遺言書は日付の特定ができないため無効になります。また、遺言本文をパソコンで作成した場合、自筆証書遺言としては原則無効になります。「書いた」という安心感だけでは危険です。

法務局の保管制度(2020年〜)

2020年7月から、自筆証書遺言を法務局(遺言書保管所)に預けることができる制度が始まりました。保管申請手数料は1件あたり3,900円です。

法務局に預けた場合は、相続発生後の家庭裁判所での検認が不要になります。また、遺言者の死亡後に相続人へ通知する「死亡時通知制度」も利用できます。

自宅保管では「発見されない」「改ざんされる」「死後に隠滅される」といったリスクが残ります。自筆証書遺言を選ぶ場合は、この法務局保管制度の利用を強くおすすめします。


公正証書遺言とは?費用・メリット・作成方法を解説

基本的な仕組み(民法第969条)

公正証書遺言は、公証人が関与して作成する遺言書です。遺言者が内容を公証人に伝え、公証人が筆記・読み聞かせ・確認を経て作成されます。証人2名の立会いが必要です。なお、推定相続人・受遺者・未成年者などは証人になれません(民法第974条)。実務では行政書士などの専門家が証人を手配するケースが多いです。

原本は公証役場に保管されるため、紛失・改ざんのリスクがありません。また、相続発生後の家庭裁判所での検認も不要です。

費用の目安

公正証書遺言の手数料は、「誰に、いくらの財産を渡すか」に応じて公証人手数料令で定められています。相続・遺贈を受ける人ごとの財産額を算出し、それぞれに対応する手数料を合算して全体の費用が決まります。主な目安は以下のとおりです。

目的の価額(受け取る人ごと)公証人手数料
100万円以下5,000円
200万円以下7,000円
500万円以下13,000円
1,000万円以下20,000円
3,000万円以下26,000円
5,000万円以下33,000円
1億円以下49,000円

これに加えて、遺言書全体の財産額が1億円以下の場合は一律13,000円の「遺言加算」がかかります。また、正本・謄本に相当する書面の交付手数料(電子データの場合1通2,500円、書面の場合は1枚300円)、証人費用、必要書類の取得費用なども別途必要です。

さらに、病気や高齢等により公証役場に来られない場合、公証人が病院・自宅・老人ホームなどに出向いて作成することもできます。その場合は手数料が50%加算されるほか、公証人の日当(4時間以内で1万円、1日で2万円)と交通費が加わります。

行政書士などの専門家に依頼した場合はさらに報酬が加わりますが、公証役場とのやり取りや必要書類の収集・証人の手配まで一貫してサポートしてもらえます。


自筆証書遺言と公正証書遺言を比較|費用・安全性・手間の違い

まず、2つの違いを一覧で確認しましょう。

比較項目自筆証書遺言公正証書遺言
費用基本無料(法務局保管は3,900円)数万円〜(財産額・依頼先による)
作成方法自分で作成公証役場で作成
証人不要2名必要
無効リスクあり(方式ミスに注意)極めて低い
相続後の検認原則必要(法務局保管なら不要)不要
保管場所自宅または法務局公証役場(原本)
書き直し容易都度手続きが必要

費用の面では、自筆証書遺言は基本的に無料ですが、公正証書遺言は財産額や依頼先によって数万円以上かかります。

安全性の面では、自筆証書遺言は方式ミスで無効になるリスクがある一方、公正証書遺言は公証人がチェックするため無効リスクが極めて低いです。改ざん・紛失リスクも、自宅保管の自筆証書遺言にはありますが、公正証書遺言は原本が公証役場で保管されるためありません。

書き直しのしやすさという点では、自筆証書遺言に軍配が上がります。気持ちが変わったときにいつでも手書きで対応でき、費用もかかりません。公正証書遺言を変更するたびに公証役場での手続きが必要になります。


自筆証書遺言と公正証書遺言、どちらがおすすめ?

自筆証書遺言が向いているのは、財産がシンプルで将来的に内容を変更する可能性が高い方や、とにかく費用を抑えたい方、まず「遺言書を書いておく」という第一歩を踏み出したい方です。ただし、法務局保管制度は必ず活用してください。

公正証書遺言が向いているのは、不動産・預金・株など財産が複数ある方、相続人が多いまたは関係が複雑な方、「絶対に有効な遺言書を残したい」という強い意思がある方、遺言書を使って実際に相続手続きを進める想定がある方です。

実務的な観点から申し上げると、「家族に迷惑をかけたくない」「相続トラブルを防ぎたい」という気持ちがある方には、公正証書遺言をおすすめしています。費用はかかりますが、それ以上のトラブル防止効果があります。


よくある質問

Q. 自筆証書遺言は法務局に預けないと無効ですか?

無効ではありません。法務局に預けなくても、要件を満たしていれば有効な遺言書です。ただし、法務局保管制度を利用すると検認が不要になり、紛失・改ざんのリスクも防げるため、利用をおすすめしています。

Q. 公正証書遺言は必ず作った方がいいですか?

財産内容や家族関係によります。相続人が多い場合や不動産が複数ある場合は、公正証書遺言の方がトラブル防止につながりやすいです。「自分の場合はどちらが向いているか」と迷われた際は、一度専門家にご相談ください。

Q. 遺言書は何歳から作れますか?

満15歳以上であれば遺言書を作成できます(民法第961条)。高齢になってから検討される方が多いですが、いざというときに備えて早めに準備されることをおすすめします。

Q. 福山市で公正証書遺言を作る場合、どこに行けばいいですか?

福山市内には公証役場があります。当事務所にご依頼いただければ、必要書類の収集から公証役場との日程調整・証人の手配まで一括してサポートします。


まとめ

自筆証書遺言は費用ゼロで作れる手軽さが魅力ですが、方式ミスで無効になるリスクがあります。作成する場合は法務局保管制度を活用し、要件を満たしているかを専門家に確認してもらうのが安心です。

公正証書遺言は費用と手間がかかる反面、無効リスクが低く相続後の手続きもスムーズです。財産が複数ある方や家族関係が複雑な方には、特に適した選択肢です。

「どちらにすればいいかわからない」という場合も、まずは一度ご相談ください。福山市・尾道・三原・府中エリアの方のご相談を、当事務所では初回無料でお受けしています。


※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的アドバイスではありません。具体的なご事情については、専門家へのご相談をお勧めします。根拠法令:民法第961条・第967条〜第969条・第974条、法務局における遺言書の保管等に関する法律、公証人手数料令第9条別表。

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