相続手続きには期限があるものも多く、特に**相続放棄(3か月)、準確定申告(4か月)、相続税申告(10か月)、相続登記(3年)**は注意が必要です。
親が亡くなると、深い悲しみの中で多くの手続きを進めなければなりません。
「何から手を付ければいいのかわからない」 「期限がある手続きはあるの?」 「相続手続きはいつまでに終わらせればいいの?」
このような不安を抱える方も多いのではないでしょうか。
福山市で親御さんが亡くなった場合も、市役所への届出や年金・保険の手続き、その後の相続手続きなどを順番に進めていく必要があります。
相続手続きには、死亡届の提出、年金や健康保険の手続き、相続人調査、遺産分割、預金の解約、不動産の名義変更(相続登記)など、さまざまなものがあります。2024年4月からは相続登記も義務化されました。
早めに全体の流れを把握しておくことが大切です。
この記事では、親が亡くなった後に必要となる主な手続きを、時系列に沿って分かりやすく解説します。
死亡後の主な手続きチェックリスト
まずは全体の流れを確認しておきましょう。
| 期限 | 主な手続き |
|---|---|
| 7日以内 | 死亡届の提出 |
| 10〜14日以内 | 年金受給停止の手続き |
| 14日以内 | 健康保険・介護保険などの手続き |
| すみやかに | 遺言書の有無の確認 |
| 3か月以内 | 相続放棄・限定承認の申述 |
| 4か月以内 | 準確定申告 |
| 10か月以内 | 相続税の申告・納付 |
| 3年以内 | 相続登記の申請 |
すべてを一度に行う必要はありませんが、期限のある手続きは優先して進める必要があります。
まず行うべき手続き
死亡届の提出
死亡届は、死亡の事実を知った日から7日以内に提出しなければなりません(戸籍法第86条)。
死亡届は親族などの届出義務者が提出します。
死亡診断書と一体になった届出書を市区町村へ提出し、受理されると火葬許可証が発行されます。
葬儀・火葬
葬儀や火葬は相続手続きとは別ですが、多くの場合、まずこちらを優先することになります。
葬儀費用は後日の相続税申告で控除の対象となる場合があるため、領収書は必ず保管しておきましょう。
年金の手続き
故人が年金を受給していた場合は、**受給を止める手続き(年金受給権者死亡届)**が必要です。期限は次のとおりです。
- 厚生年金・共済年金:10日以内
- 国民年金:14日以内
手続きが遅れて故人の口座に年金が振り込まれ続けると、後日返還が必要になります。
また、亡くなった月分までの年金で未受給のものは、未支給年金として生計を同じくしていた遺族が請求できます。受給停止と一緒に手続きするとスムーズです。
※日本年金機構にマイナンバーが収録されている方は、死亡届そのものは原則省略できる場合があります(未支給年金の請求は別途必要)。
健康保険・介護保険などの手続き
故人が加入していた健康保険や介護保険の資格喪失手続きが必要になります(国民健康保険・後期高齢者医療制度・介護保険はおおむね14日以内)。
後期高齢者医療制度を利用していた場合は、保険証の返却も必要です。
福山市では、おくやみ関連の手続きをまとめて案内する窓口も設けられています。
遺言書がないか確認する
相続手続きを始める前に、まず遺言書の有無を確認しましょう。
遺言書がある場合、原則としてその内容に従って相続手続きを進めることになります。
遺言書には主に次の3種類があります。
- 自筆証書遺言
- 公正証書遺言
- 秘密証書遺言
自宅の金庫や貸金庫、公証役場(公正証書遺言の場合)などを確認してみましょう。
自筆証書遺言が見つかったら「検認」に注意
自筆証書遺言が見つかった場合は、勝手に開封せず、家庭裁判所での検認手続きが必要になるのが原則です(民法第1004条)。封印のある遺言書を検認前に開封すると、5万円以下の過料の対象となることもあります。
ただし、次の場合は検認が不要です。
- **法務局の「自筆証書遺言書保管制度」**を利用して保管されていた自筆証書遺言
- 公正証書遺言
検認が必要かどうか判断に迷う場合は、開封せずに専門家へ相談しましょう。
相続人を調査する
戸籍収集が必要
誰が相続人になるのかを確定するためには、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍を収集する必要があります。
現在の戸籍だけでは足りないことが多く、転籍や婚姻などの履歴を追いながら集めていきます。
誰が相続人になるのか確認する
例えば次のようなケースがあります。
配偶者と子どもがいる場合 配偶者と子どもが相続人になります。
子どもがいない夫婦の場合 配偶者と故人の父母が相続人になります。父母がすでに亡くなっている場合は、兄弟姉妹が相続人になります。このケースでは配偶者だけで手続きを完結できるわけではなく、兄弟姉妹全員の協力が必要になることもあります。
詳しくは関連記事「子どもがいない夫婦の相続」もあわせてご覧ください。
相続財産を調査する
相続では、財産だけでなく借金などの負債も引き継ぎます。そのため、相続財産を正確に把握することが重要です。
主な調査対象は次のとおりです。
- 預貯金
- 不動産
- 株式や投資信託
- 生命保険
- 自動車
- 借入金
- クレジット債務
通帳や郵便物、固定資産税の納税通知書などを確認すると、財産の把握に役立ちます。
「デジタル遺産」にも注意
近年は、通帳や郵便物が残らないデジタル遺産の把握が課題になっています。次のようなものは見落とされやすいため、スマートフォンやパソコン、メールなども確認しましょう。
- ネット銀行の口座
- ネット証券の口座
- 暗号資産(仮想通貨)
- PayPayなどの電子マネー・ポイント
これらは存在に気づかれないまま放置されやすく、後から判明して相続手続きをやり直すことになるケースもあります。
相続放棄を検討する
相続放棄の期限は3か月
相続放棄をする場合は、原則として自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、家庭裁判所へ申述しなければなりません(民法第915条)。
この期間(熟慮期間)を過ぎると、相続を単純承認したものとみなされる可能性があります。
借金が多い場合は注意
財産より借金が多い場合は、相続放棄を検討することがあります。
ただし、遺産を処分・消費してしまうと相続放棄が認められなくなる可能性があるため、慎重な対応が必要です。不安な場合は早めに専門家へ相談しましょう。
準確定申告(4か月以内)
故人に一定の所得があり確定申告が必要だった場合は、相続人が代わりに準確定申告を行います。
期限は相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内です(国税庁・準確定申告)。医療費控除などにより還付を受けられるケースもあります。
遺産分割協議を行う
遺言書がない場合は、相続人全員で遺産の分け方を話し合います。これを遺産分割協議といいます(遺言書がない場合の進め方は「遺言書がないとどうなる?」でも解説しています)。
例えば、
- 不動産を誰が取得するか
- 預金をどのように分けるか
- 自動車を誰が引き継ぐか
などを決めます。
相続人が一人でも欠けていると協議は成立しません。協議がまとまったら、遺産分割協議書を作成します。
相続税の申告・納付(10か月以内)
相続財産が基礎控除額を超える場合などは、相続税の申告・納付が必要です。
期限は相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内です(相続税法第27条)。期限を過ぎると延滞税や加算税が課されることがあります。
相続税がかかるかどうかは、遺産の総額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えるかどうかが一つの目安になります。判断に迷う場合は税理士へご相談ください。
名義変更や解約手続きを行う
遺産分割協議が終わったら、各種名義変更や解約手続きを進めます。
預金口座
金融機関ごとに必要書類を提出して、解約や払戻しを行います。
不動産(相続登記)
不動産の相続登記を行います。
2024年4月1日から相続登記は義務化され、不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請しなければなりません。正当な理由なく放置すると、10万円以下の過料の対象となる場合があります(不動産登記法第76条の2)。
2024年4月1日より前に発生した相続で未登記のものも対象となり、その期限は2027年3月31日です。すぐに登記できない事情がある場合は、「相続人申告登記」という暫定的な制度も利用できます。
相続登記は司法書士の専門分野です。当事務所では戸籍収集や必要書類の準備までサポートし、登記は提携の司法書士をご紹介することも可能です。
自動車
普通自動車・軽自動車についても名義変更が必要です。
よくある質問(FAQ)
Q. 相続手続きは全部でいつまでに終わらせればいいですか?
A. 手続きごとに期限が異なります。相続放棄は3か月、準確定申告は4か月、相続税の申告・納付は10か月、相続登記は3年が主な期限です。期限のある手続きから優先的に進めましょう。
Q. 遺言書は勝手に開けてはいけないのですか?
A. 自筆証書遺言(法務局保管制度を利用していないもの)は、家庭裁判所での検認前に開封してはいけません。検認前の開封は過料の対象になることがあります。公正証書遺言と法務局保管の自筆証書遺言は検認不要です。
Q. 相続放棄の3か月を過ぎてしまったらどうなりますか?
A. 原則として単純承認したものとみなされ、借金も引き継ぐことになります。ただし、被相続人に借金があることを後から知ったなどの事情がある場合は、例外的に認められることもあります。早めに専門家へご相談ください。
Q. 親の銀行口座はすぐ凍結されますか?
A. 金融機関が死亡の事実を把握すると、口座は凍結されます。凍結後は、原則として相続手続きが完了するまで自由に引き出せません。ただし、葬儀費用や当面の生活費などのために、一定の条件のもとで「預貯金の払戻し(仮払い)制度」を利用できる場合があります(民法第909条の2/1金融機関あたり上限150万円)。
Q. 相続手続きは誰に相談すればいいですか?
A.内容によって担当する専門家が異なります(下記参照)。相続手続きは複数の専門家が関わることもあるため、まずは現在の状況を整理することが大切です。どこに相談すればよいか分からない場合は、行政書士などの専門家に相談し、必要に応じて他士業と連携しながら手続きを進める方法もあります。
福山市で利用できる相談窓口
福山市では、ご遺族向けのおくやみ手続きに関する案内が用意されています。死亡後には、市役所で必要な手続きを確認しておくとよいでしょう。
また、相続手続きは内容によって担当する専門家が異なります。
| 専門家 | 主な担当 |
|---|---|
| 行政書士 | 戸籍収集、相続人調査、遺産分割協議書の作成など |
| 司法書士 | 相続登記 |
| 税理士 | 相続税の申告 |
| 弁護士 | 相続人同士の紛争(争いがある場合) |
状況に応じて、適切な専門家へ相談することが大切です。
行政書士に依頼できる相続手続き
行政書士は、相続に関する書類作成や手続きサポートを行うことができます。例えば、
- 相続人調査
- 戸籍収集
- 法定相続情報一覧図の作成支援
- 財産目録の作成
- 遺産分割協議書の作成
- 預貯金の払戻し手続きのサポート
- 自動車の名義変更
などに対応できます。
「仕事が忙しくて戸籍収集をする時間がない」 「何から始めればよいかわからない」
という方は、一度専門家へ相談することをおすすめします。
まとめ
親が亡くなった後は、多くの手続きが必要になります。特に重要なのは次の3点です。
- 遺言書の有無を確認する(自筆証書遺言は検認が必要な場合あり)
- 相続人と相続財産を調査する
- 相続放棄の3か月、相続税の10か月、相続登記の3年といった期限に注意する
相続手続きは、早めに全体像を把握して計画的に進めることが大切です。
なお、相続の負担は生前の備えで大きく減らせます。親御さんがお元気なうちにできる対策については
「認知症になる前の相続対策」もあわせてご覧ください。
森岡行政書士事務所では、相続人調査、戸籍収集、法定相続情報一覧図の作成支援、遺産分割協議書の作成など、相続手続きをサポートしております。
「何から始めればよいかわからない」 「戸籍収集や銀行手続きを任せたい」 「相続人が多くて手続きが進まない」
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