「私たち夫婦には子どもがいないから、どちらかが亡くなったら当然もう一方がすべて相続する」
そう思われている方は少なくありません。
しかし、子どもがいない夫婦の相続では、必ずしも配偶者だけが相続人になるわけではありません。
亡くなった方の親や兄弟姉妹が相続人になることがあり、遺言書がない場合には、残された配偶者がその方々と遺産分割協議を行わなければなりません。
よくある事例として、
- 「夫の兄弟と話し合いが必要になるなんて知らなかった」
- 「妻にすべて残ると思っていた」
- 「何十年も会っていない兄弟姉妹と連絡を取らなければならなくなった」
というケースは少なくありません。
特に、自宅不動産が亡くなった方の名義になっている場合や、兄弟姉妹と疎遠な場合には、相続手続きが大きな負担になることがあります。
この記事では、子どもがいない夫婦の相続について、
- 誰が相続人になるのか
- 法定相続分はどうなるのか
- よくあるトラブル
- 遺言書が重要な理由
をわかりやすく解説します。
目次
- 子どもがいない夫婦の相続でまず知っておきたいこと
- ケース1 親が存命の場合
- ケース2 親が亡くなっている場合
- ケース3 甥・姪が相続人になることもある
- 子どもがいない夫婦で実際によくある相続トラブル
- 兄弟姉妹には遺留分がない
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子どもがいない夫婦の相続でまず知っておきたいこと
相続では、配偶者は常に相続人になります。
しかし、
「配偶者が相続人になる」 ことと、
「配偶者がすべて相続する」 ことは別の話です。
亡くなった方に子どもがいない場合、法律で定められた順位に従って、配偶者以外の相続人が決まります。
順位は次のとおりです。
第1順位 子ども・孫
まず最優先で相続人になるのが子どもです。
子どもが亡くなっている場合は、その子ども(孫)が相続人になります。
ただし、今回のテーマは「子どもがいない夫婦」ですので、この順位の相続人はいません。
第2順位 父母・祖父母
子どもがいない場合は、亡くなった方の父母が相続人になります。
父母がすでに亡くなっている場合は祖父母が相続人になります。
第3順位 兄弟姉妹
子どももおらず、父母・祖父母もすでに亡くなっている場合は、兄弟姉妹が相続人になります。
つまり、子どもがいない夫婦では、
親が存命なら親が相続人
親も亡くなっていれば兄弟姉妹が相続人
になるのです。
ケース1 親が存命の場合
たとえば、
- 夫が死亡
- 子どもはいない
- 夫の父母が存命
というケースを考えてみましょう。
この場合の相続人は、
- 妻
- 父
- 母
です。
法定相続分
法律で定められた取り分(法定相続分)は、
- 妻 3分の2
- 父母 3分の1
となります。
例えば相続財産が3,000万円の場合、
| 相続人 | 法定相続分 | 金額 |
|---|---|---|
| 妻 | 3分の2 | 2,000万円 |
| 父母 | 3分の1 | 1,000万円 |
となります。
もちろん、相続人全員が合意すれば妻がすべて取得することも可能です。
しかし、遺言書がない場合は、父母との話し合いが必要になります。
ケース2 親が亡くなっている場合
次に、
- 子どもはいない
- 父母も祖父母も亡くなっている
というケースです。
この場合は兄弟姉妹が相続人になります。
例えば、夫に兄と妹がいる場合の相続人は、
- 妻
- 兄
- 妹
の3人です。
法定相続分
法定相続分は、
- 妻 4分の3
- 兄弟姉妹全体 4分の1
となります。
相続財産が4,000万円の場合、
| 相続人 | 法定相続分 | 金額 |
|---|---|---|
| 妻 | 4分の3 | 3,000万円 |
| 兄 | 8分の1 | 500万円 |
| 妹 | 8分の1 | 500万円 |
になります。
ここで重要なのは、
兄弟姉妹と仲が良いかどうかは関係ない
ということです。
何十年も会っていなくても、法律上の相続人である以上、遺産分割協議への参加が必要になります。
ケース3 甥・姪が相続人になることもある
さらに複雑になるケースがあります。
兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合です。
例えば、
- 子どもはいない
- 父母も死亡
- 兄も死亡
という場合、兄の子ども(甥・姪)が相続人になります。
これを代襲相続といいます。
残された配偶者からすると、「甥や姪とはほとんど会ったことがない」ということも珍しくありません。
しかし、そのような場合でも遺産分割協議には参加してもらう必要があります。
子どもがいない夫婦で実際によくある相続トラブル
トラブル① 自宅を相続できると思っていた
最も多いのが自宅の問題です。
例えば、
- 自宅は夫名義
- 預金はあまりない
- 子どもはいない
というケース。
夫が亡くなった後、妻は当然自宅を相続できると思っていたとしても、兄弟姉妹が相続人であれば話は別です。
兄弟姉妹から、「自分たちの相続分を現金で支払ってほしい」と言われる可能性があります。
預金が少ない場合、
- 自宅を売却する
- 借入れをして代償金を支払う
という選択を迫られることもあります。
トラブル② 何十年も会っていない親族と話し合うことになる
兄弟姉妹が相続人になる場合、
- 連絡先がわからない
- 長年疎遠
- 遠方に住んでいる
- 海外に住んでいる
というケースがあります。
しかし、一人でも欠けた遺産分割協議は無効です。
そのため、まず戸籍を収集し、住所を調査し、連絡を取り、書類を郵送し、署名押印を依頼する必要があります。
残された配偶者にとって、非常に大きな負担になります。
トラブル③ 銀行口座や不動産の手続きが進まない
遺言書がない場合、銀行や法務局では、相続人全員が合意したことを示す遺産分割協議書の提出を求められます。
そのため、一人でも協力しない相続人がいると、
- 預金を解約できない
- 不動産の名義変更ができない
- 売却できない
という問題が発生します。
「兄弟とは仲が良いから大丈夫」と思っていても、実際にお金の話になると考え方が変わることは珍しくありません。
兄弟姉妹には遺留分がない
子どもがいない夫婦の相続において、ぜひ知っておいていただきたい重要なポイントがあります。
それは、兄弟姉妹には遺留分がないということです。
遺留分とは?
遺留分とは、一定の相続人に法律上保障された最低限の取り分のことです。
- 配偶者
- 子ども
- 父母(直系尊属)
には遺留分があります。
そのため、遺言書で「全財産を長男に相続させる」と書いたとしても、他の相続人は遺留分侵害額請求を行うことができます。
しかし、兄弟姉妹には遺留分が認められていません。
子どもがいない夫婦では遺言書の効果が大きい
例えば、
- 子どもはいない
- 父母もすでに亡くなっている
- 相続人は妻と兄弟姉妹
というケースを考えてみましょう。
この場合、遺言書で「全ての財産を妻○○に相続させる」と記載しておけば、原則として兄弟姉妹は遺留分を請求できません。
つまり、遺言書があるだけで、
- 兄弟姉妹との遺産分割協議が不要になる
- 配偶者が安心して自宅に住み続けられる
- 預貯金の解約や不動産の名義変更がスムーズになる
という大きなメリットがあります。
ただし親が存命の場合は注意
一方で、
- 子どもはいない
- 父母が存命
というケースでは事情が変わります。
父母には遺留分があります。
そのため、「全財産を妻に相続させる」という遺言書を作成した場合でも、父母から遺留分侵害額請求を受ける可能性があります。
もっとも、実際には親が高齢であったり、「妻に残してあげてほしい」という考えを持たれていることも少なくありません。
ただし、法的には遺留分の問題が残るため、親が存命の場合は専門家と相談しながら内容を検討することをおすすめします。
子どもがいない夫婦に公正証書遺言をおすすめする理由
遺言書には主に次の2種類があります。
- 自筆証書遺言
- 公正証書遺言
どちらも法律上有効ですが、子どもがいない夫婦には、公正証書遺言をおすすめすることが多いです。
理由① 無効になるリスクが低い
自筆証書遺言は、日付・氏名・押印・自筆などの厳格なルールがあります。
せっかく書いても、方式を誤れば無効になる可能性があります。
一方、公正証書遺言は公証人が作成するため、方式不備による無効リスクが極めて低くなります。
理由② 紛失や改ざんの心配がない
自筆証書遺言は、見つからない・捨てられる・改ざんされるといったリスクがあります。
公正証書遺言は原本が公証役場で保管されるため、そのような心配がありません。
理由③ 相続後の手続きがスムーズ
公正証書遺言には家庭裁判所の検認手続きが不要です。
そのため、相続開始後の銀行手続き・不動産の名義変更・証券口座の手続きなどがスムーズになります。
残された配偶者の負担を減らすという意味でも、大きなメリットがあります。
子どもがいない夫婦の相続対策は遺言書だけではない
状況によっては、遺言書だけでなく、
- 家族信託(民事信託)
- 任意後見契約
- 生前贈与
などを組み合わせることもあります。
例えば、
- 認知症になった後の財産管理が心配
- 夫婦のどちらかが施設へ入る可能性がある
- 配偶者が亡くなった後の財産承継先まで決めておきたい
という場合には、遺言書だけでは対応しきれないこともあります。
そのため、ご夫婦の状況に応じた対策を考えることが重要です。
よくある質問
Q. 妻(夫)が全て相続するには必ず遺言書が必要ですか?
法律上必須ではありませんが、遺言書がなければ親や兄弟姉妹が相続人になる場合に遺産分割協議が必要になります。全員の合意が得られれば配偶者がすべて取得することも可能ですが、話し合いが長期化したり、協力が得られないケースもあります。残された配偶者の負担を確実に減らすためには、遺言書を作成しておくことが事実上必要といえます。
Q. 兄弟姉妹が相続放棄してくれれば問題ないですか?
結果的にそうなることもあります。ただし、相続放棄は相続人自身の自由な判断によるものです。事前に確約することはできません。また、放棄手続きには家庭裁判所への申述が必要です。「兄弟が放棄してくれるだろう」と考えるのではなく、遺言書による対策を検討した方が安心です。
Q. 夫婦共有名義の家なら大丈夫ですか?
共有名義であっても、亡くなった方の持分については相続が発生します。そのため、共有名義だからといって相続対策が不要になるわけではありません。
Q. 何歳くらいから遺言書を考えるべきですか?
法律上は15歳以上で作成できます。実務上は、定年退職後・子どもがいないことを意識し始めたとき・不動産を取得したとき・配偶者の将来が心配になったときなどが検討のタイミングになることが多いです。
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まとめ
子どもがいない夫婦の相続では、
- 配偶者だけでなく親や兄弟姉妹が相続人になることがある
- 遺言書がないと遺産分割協議が必要になる
- 兄弟姉妹には遺留分がない
- 遺言書によって配偶者へ財産を集中させやすい
という特徴があります。
特に、
「自宅は配偶者に残したい」
「兄弟姉妹に迷惑をかけたくない」
「残された配偶者に苦労をかけたくない」
というお気持ちがある方は、早めに遺言書の作成を検討されることをおすすめします。
遺言書は、ご自身の財産を誰に残すかを決めるだけではありません。
残された配偶者が安心して暮らし続けるための、大切な思いやりでもあります。
子どもがいない夫婦の相続・遺言書のご相談は森岡行政書士事務所へ
森岡行政書士事務所では、福山市を中心に、
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